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[15]60にして立つ・建つ

 女性同士のおしゃべりは、よくもまぁこんな永い間、話すことがあるのかと呆れかえります。実は男同士でもおしゃべりはあるのです。

 先日も定年になりました友人の自宅で、夕方の5時から夜中の2時まで、さらに翌朝9時〜12時まで「おしゃべり」をしてきました。
 内容によってはそのまま「お笑い」になります。

「あの女の顔は1円玉だったなぁー」
「どういう意味なの?」
「もう崩しようがない顔だよー」

「一万円札の女はどうなの?」
「1円玉になる。崩れていく過程が醜い。最悪だよ」

「そうすると醜い過程がない1円玉が一番だなー」
「いや違う。五円玉だ。五縁があったのだー」
 もうこれ以上書きますと女性から反撃を買いますので止めておきましょう。

 この友人は定年を迎えた時に、全く忘れていた預金を会社から知らされました。その額の多さにビックリして、戸建ての家を衝動的に買ってしまいました。それは、それは立派な豪邸です。

 バスは2時間に一本です。猿、たぬき、うさぎ、野鼠、イノシシが時々出てきます。あとは熊と鹿が出てくれば「猟師」になるそうです。

「俺はこの場所に昔から住みたかったのだ」
「なにかいいことあるの、こんな山の中?」
「祖先の土地だよ。俺はこの辺一帯を支配していた豪族の末裔(まつえい)だよ」

「石器時代の話し?」
「バカ。鎌倉幕府と戦ったのだ」
「それでここの地名が負田《まけた》。貴方のお名前も負田」

 こんなお話をするとキリがなくなります。ただ残念なことに彼はいまだ「独身」です。そこで「茶のみ友達」の女性をお世話しようと思いましたが、こんに答えが返って来ました。

「うーん、独り身が一番いい。とくに最近はいろいろな人が訪ねてくるのだ。臼井さんだって俺が独り身だから来るのだろう」
「それもそうだなー。奥さんがいたらいくにくいねー」

「俺の兄妹は12人もいる。中には10年ぶりに来る兄弟もいる。幼なじみも来るよ。それも夫婦で来て庭にいろいろ植えたりしてくれる」
「やはり豪族の末裔がお城を造ったからだ」

「ミーちゃんいるー。なんて70のオバサンがくるのだ。俺は知らないことこのオバサンはよく知っているのだ」
「そのオバサンも家来の末裔だよ」
「へんな家来がたくさんいるから寂しくないかぁー」

 さらに「家来」の話が延々と続きます。というよりは私が無理矢理に「殿様」にしてしまうのです。こうなりますと現代と石器時代がごじゃ、ごじゃになりまして、最後の結論はこうなります。

 60歳にして「城」を建つ。糖尿病でも立つのか。「立つ」と「建つ」の違いはどうなのか。


「もしもし、地震があったの。ここはゆれてないよ。下が岩盤だから大丈夫だ」
ガッチャン。

「うーん。俺の祖先が金塊を埋めたらしい。その金塊が散らばって岩盤になった」

 次回の訪問は「おでん」を鍋にいっぱい入れて、彼の家来を呼び寄せて、おでんとお酒を振舞う計画です。おでんづくりは「ご縁」があった私の女房がやってくれます。

 金塊のつづきを聞きたい方は臼井まで連絡をください。席料はご縁です。

(2006年2月15日)



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