【4】新宿発23時55分発・鈍行・松本行き
作  臼井 淳一
挿絵 金光 敏博


 新宿発23時55分発・鈍行・松本行き。この列車には何度乗車したことでしょうか。12番ホームは山仕度の若い男女で週末は混雑していました。

 私たちの時代は「連休」が少なく、ほとんどが車中一泊の山行でした。この山行は、私たち「山岳会」の定例山行なので人気があり、初心者の女性が多かったです。初めてお会いする女性も多く、胸が高鳴る12番ホームの出会いでした。


きりえ「山男の歌」


 ホームでは恒例の「宴会」がはじまります。ビールを飲み、お弁当を食べ、 「自己紹介」などで盛り上がりました。なにをやっても「盛り上がって」しまうのです。これが青春ですね。

 車中では、ボソボソと「語らい?」が続きます。そのうち「うるさい!もう寝ろ!」と、どこからかの一声で静かに眠りに陥るのです。この頃の若者は「素直」でしたね。いや、違うのです。この列車に乗っている90%の人は登山者なのです。明日の山行に備えるため睡眠は必要なのです。「うるさい」の声に逆らう人はだれもいません。

 網棚に寝る豪快な男性、床下にごろんと寝る人、ビニール枕で空いた座席を利用する女性。なかには女性の足枕?でちゃかり寝ている男性もいました。

 2〜3時間の短い「睡眠」でありましたが、目的の駅に到着しますと、晴れ晴れとした気分になります。「さぁ、次はバスだ!」。

 心は完全に「山」にひたりきって行きます。これも青春でした。                         

[2001年6月1日]



※「きりえ工房」・「きりえ画廊」にもお立ち寄りください
http://www.michibata.net/kirie/index.html

「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ