山の道具のなかで一番に愛着を感じるのは「ピッケル」であります。はじめてピッケルを手にしたときには、雪のない冬山にピッケルを持って出かけ、「雪やこんこん」「雪がふーる」と唄ったものです。
下宿の部屋の天井には山の地図をぎっしり貼り、壁にはアルプス、ヒマラヤの写真をべたべた貼りつけ、その壁にピッケルを斜めに吊るしました。また、天井からザイルをたらし、首吊ではなく、宙吊の瞑想にふけりました。
そんな部屋の中で読む「山岳小説」「山の紀行集」は、テレビ、ラジオを全く必要としないほど魅力ある読み物でした。新宿の紀伊国屋書店、渋谷の三省堂には山の「コーナー」があり、3日に一度は立ち読みしたものです。