さて、30分も温泉に浸っていますと「猿」が現れました。このときほど、なにかほっとしました。それは「人」に近い「ひと」とお会いできたからです。
すっかりふやけた足には、登山靴は入りません。林道を2時間かけて、やっと今晩の宿であります。平家の落人部落だったと言われる和山温泉にたどりつきました。この日、10時間歩き8時間はまったく人に会いませんでした。
この宿から見るトリカブト山は雄大です。恥ずかしいことですが、この山は2度登り、3度目にやっと頂上に立つことができました。道に迷ったわけではないのです。道がなくなってしまうのです。
実は道がなくなったところに垂直に鎖があり、ここを10メートル下ると。頂上への道があるのです。頂上には小さな「祠」があり、名前を記帳できるのです。けれども頂上からはなにも見えません。熊笹におおられ、今にも熊が出てきそうな頂上です。
人気のない山ですが、こんな山が私は大好きです。
この話しは20年以上も前のことです。今では林道も舗装され、切明にも温泉宿ができ、「冬は陸の孤島」と言われるほど雪がつもりましたが、今では夏でも冬でも車が通れ、すっかり観光化されてしまい。つまらない場所になっているとか。と聞きました。