やっ
康さんのこと(3)

《 ああー修学旅行・舟木 康夫 》

作 臼井 淳一  



 康さんとは小学校6年生の時、また、同じクラスになりました。
 11月に1泊2日の日光・修学旅行の話し合いが、クラスでおこなわれていた時の出来事です。

 同じ布団に二人で寝ることで、だれと寝るかでクラスで話し合いがおこなわれました。当然、おいらは康さんと同じ布団で寝ると、事前に話し合っていました。みんなもそうでした。

 ところが、海老原和夫こと、えびちゃんは相手が決まりませんでした。えびちゃんは鼻が悪く、大きく息を吐くと異臭を放ちます。それでみんな嫌いました。

 担任の先生は「海老原と寝るヤツはいないのか」と、男子生徒を見まわして言いました。クラスがシーンとなりました。

 その時です。突然、康さんが「おれ、えびちゃんと寝る」といいました。おいらは、びっくりしましたが、康さんはえらいと思い、思わず手をたたきました。
 
 クラス全体がおいらの拍手に、シーンとしてしまいました。えびちゃんは下をむいたままです。

 担任の先生は「下関康夫はえらい。巴淳一の拍手も素直だ」と言ってくれました。
 小学時代に誉められたのは、康さんもおいらも、これが最初で最後でした。

 えびちゃんと3人で、下校途中、康さんは「えびちゃん、俺の金玉さわるなよ」といったら、えびちゃんは、にやーっと笑い「バッチイー」と一言いいました。

 結局、修学旅行に康さんは、家庭の事情で行けなくなりました。おいらは、えびちゃんと寝ることになりましたが、なんのこだわりもありませんでした。が、康さんと一緒に行けないのが、とても侘びしかったです。

(つづく)

[2000年7月]