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「野口みずきは負けるわけがない(金メダルを必ず取る)よ」 数年来こういい続けてきた人がいる。元巨人軍エースで、V9スタートに貢献した中村稔さんである。 野口みずきといえばアテネ五輪女子マラソンの金メダリストで、五輪連覇を目指す日本代表選手のエース格であった。 その野口を「走力はもちろんスタミナ、精神力、どれをとっても超一流のアスリートだ。北京でも金は間違いない」と言って、中村さんは太鼓判を押してきた。 中村さんと野口の出会いは二〇〇二年のこと。母校・宇治山田商の後輩に有望なマラソン選手がいると聞かされた。間もなく、野口が所用で上京したとき、新橋のすし店に誘った。 「よく食べたねぇ。マグロの赤身だけで四十貫以上ペロッだもの。当時は酒も控えていなくビールをグイグイいっていた。しかしマラソンに対する姿勢、考え方はしっかりしていたな」 初対面での「大物」ぶりに将来の活躍を予感したという中村さん。翌年のパリ世界陸上で銀、そしてアテネ五輪では金。予感は見事に的中したと目を細める。 それ以来、関東の野口応援団を取りまとめている。 北京オリンピック激励会でも「みずきが負けるわけがない!」と断言。寄せ書きにもそう書いた。 自らコーチとして桑田真澄、槙原寛己、斉藤雅樹ら巨人軍のエースを育てた経験もある。勝ち続けることの難しさは自身が一番知っている。 「負けるわけがない」中村さんの勝利の言葉を胸に、新種の超軽量シューズとともに野口みずきは北京を駆け抜けるはずだったのだが――。 |
(「損保のなかま」2008年9月1日付より)
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