スポーツに吹く風
スポーツジャーナリスト 泉 准也


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 ■16 プロ野球に女子高生選手

イラスト

 09年春に開幕する野球の関西独立リーグの一つ、神戸9(ナイン)クルーズからドラフト指名された女子高生、吉田えり投手(神奈川・川崎北高校二年)。

 「頭の中が真っ白。でもプロで輝きたいという気持ちはあった。気持ちを新たに身を引き締めていきたい」と入団を決めた。

 身長150センチ、体重52キロのきゃしゃな体ながら、トライアウト(入団テスト)では、下手投げから繰り出したナックルボールが、捕手が後逸するほど揺れて落ちた。球速は最高で101キロだが、打者の手元で不規則に変化するこの球を武器に、男子選手を相手に一回無安打で切り抜けた。

 指名した中田良弘監督(元阪神)は「頭を使った投球をする。まず、短いイニングで使いたい」と語る。プロ野球経験者が言うのだから、間違いはないのだろう。「柔よく剛を制す」ようなナックルボールがどれほど通用するのか、興味は尽きない。

 小二から野球を始め、中学で軟式、高校進学後に硬式に転向。08年9月からクラブチームに移った。大リーグ、レッド・ソックスのウェークフィールド投手のような、ナックルで抑えられる投手になることが夢だそうだ。

 とはいえ、彼女を取り巻く状況は厳しいものがある。独立リーグはどこも資金のやり繰りに苦労している。関係者の間には「使いものにならなくて解雇になっても、高校生ならつぶしがきく。客寄せパンダで終わる可能性もあるよ」との声もある。

 ポジションが投手ということから強襲打を受ける危険性が高く、大けがを心配する人もいる。

 男子と一緒にプレーする日本初の女子プロ野球選手。話題性だけでなく、今後の活躍に期待したい。


(「損保のなかま」2009年1月1日付より)


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