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招致委員会会長であり、日本ラグビー協会会長(今年六月に就任)の森喜朗前首相にとってこの選挙は、世界に自分をアピールする初めての機会であった。しかし、結果は黒星となった。 森氏も黒星がさぞかし悔しかったのだろう、投票したIRB(国際ラグビーボード)の理事たちに対して不満たらたらのようだった。 しかし、冷静に考えてみれば、大英帝国の植民地だった時代からラグビーが文化として定着したニュージーランドを相手にしたのでは、人気が下落するばかりの日本に到底勝ち目はなかった。 ニュージーランドは選挙のプレゼンテーションで「赤字は政府が補てんする」と明言した。そう言えるのも同国ではラグビーが一般民衆のアイデンティティーになっているからにほかならない。 それに引き換え日本ではどうか。トップ・リーグをつくり起死回生を狙ったものの、三季目の今シーズンも相変わらず人気は低迷している。唯一人気を保てているのは、早稲田、慶応、明治三大学の対抗戦だけである。 人気低迷の要因として上げられるのはラグビーの普及振興が壁にぶち当たっていることだ。高校のラグビーで部員不足によってチームを構成できないところが続出している。それは土壌そのものが枯れてきていることの表れだ。 二〇一一年ラグビー・ワールドカップ招致に失敗したのを機に、人気を上げるための場当たり的な発想を止めて、ラグビーの土壌を肥やすための普及振興策を真剣に考えるべきだろう。 |
(「損保のなかま」2006年1月1日付より)
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