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 ■18 都知事選に利用された東京マラソン

 重要な政治問題から民衆の目や関心をそらすのにスポーツイベントがどれほど有効かを、東京マラソン(二月十八日)は改めて証明した。

 四十年の歴史がある青梅マラソン(東京都青梅市)をけ散らすように東京マラソンを強引に開催した石原慎太郎都知事の狙いは、都知事選を有利に戦うためのプロパガンダではなかったか。

 周知のように石原氏は、自らのさまざまな問題が暴かれてイメージはガタ落し、都知事選を控えてかつてない窮地に追い込まれた。
 そこで石原氏は、都民の目や関心を都政問題からそらすとともに、イメージアップを図る選挙向けプロパガンダとして東京マラソンと二〇一六年オリンピック招致を打ち出したのではないか。
 プロパガンダゆえに石原氏はマラソンのレース内容には関心がなく、観光コースを三万以上の参加者が走ることで東京をアピールさせることしか考えなかった。メディアもこぞって、「三万人の東京マラソン!」と大々的に盛り上げた。

 「民衆を愚弄(ぐろう)し思考力を奪い尽くす娯楽路線の下で、国家権力による報道・情報管理・統制が進む」と鎌倉孝夫・埼玉大学名誉教授は、著書「株価至上主義経済」(お茶の水書房)でメディアを厳しく批判している。
 メディアがスポーツを娯楽ととらえているのはいうまでもない。三万人を超す参加者をはじめ沿道で声援を送る人たち、そしてテレビ観戦する視聴者などは、まさにメディアによって思考力を奪われ、石原氏の策略にやすやすとはまってしまった、といえるのではなかろうか。
 参加者と握手しながら、してやったり、といわんばかりに笑みを浮かべる石原氏の映像が印象的だった。

(「損保のなかま」2007年4月1日付より)


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