「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ


 ■1…白黒つける?
   深夜三時のストラック・アウト

朝の三時になるとストライクゾーンが変わるのか!(デーブ・ジョンソン)

 今年のパ・リーグの優勝方式はリーグの二位と三位チームが挑戦者決定戦を行い、勝ち上がった方が一位チームと優勝を争う。その場合、レギュラーシーズンの成績が加味される。引き離したゲーム差だけ一位のチームが有利になる仕組みだ。考え抜かれた方式だが、ややこしいのも事実だ。三位のチームにも優勝の可能性があるということに違和感を覚えるファンも多いだろう。

メッツ監督時代のジョンソン
 しかし、両リーグに共通する「わかりにくさ」は引き分け試合である。チーム成績は勝率で決められる。「勝数÷(引き分け試合を除く)試合数」である。勝数が多くても勝率で優勝を逸するケースは十分あり得る。たとえば一九八六年のセ・リーグは巨人75勝48敗、広島73勝46敗で2勝多い巨人が優勝できなかった。以来、セ・リーグは「引き分け再試合」制度を採用、最多勝数チームと最高勝率チームが同一となるようにした。これは極めて合理的な方式だったのだが、選手の健康やスケジュールなどを理由に廃止され、再び「勝率主義」に戻ってしまった。

 メジャーリーグに引き分けという概念はない。後日そのゲームの続きをやるか、あるいは再試合で、かならず決着をつける。
 冒頭のセリフは、巨人でもプレーしたジョンソンが、メッツの監督時代に球審のテリー・テータに向かって発したもの。時は一九八五年七月四日のブレーブス戦。ゲームは深夜の三時を回って同点の一七回表。打席にはメッツの四番ストローベリーがいた。外角を大きく外れるボールを「ストライク」とコールされたストローベリーが抗議し、ジョンソン監督もベンチを飛び出して加勢。すると球審は「デービー、いい加減にしてくれ。もう夜中の三時だぜ」と言い、それに対するジョンソンの反論だが、お返しは「退場」。
 このとき観衆はまだ八千人が残っていた。ゲームは三時五十五分に終わり、16対13でメッツが勝った。ベンチ入りの投手がいなくなれば野手が登板してでもゲームを続けるのが大リーグ方式だが、車を持たない観衆はどうしたのだろう?当日の仕事は?などと余計な心配をしてしまうのが日常に縛られた日本的発想。

 この、白黒つけるアメリカ人気質、わかりやすくて気持ちがいいが、その爽快さに悪乗りした、世界を「善と悪」に二極化する単純思想はいただけない。

(「損保のなかま」2004年3月1日付より)


「サタデーリーグ」トップページへ
前ページへ