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神様というものは手紙に返事を書かないものだ。(テッド・ウイリアムス) 第二次世界大戦と朝鮮戦争の兵役で五年間のブランクがあるにもかかわらず六度も首位打者を獲得している。現役一九年間の通算打率は○・三四四で五二一ホームラン。 ウイリアムスは、ホームランを打ってファンが総立ちで拍手しているときでも、手を振るどころか帽子のつばに手をやることすらしなかった。 引退表明後、最終試合の最終打席でホームランを打ったときも、球場を揺るがすスタンディング・オベーションと「ウイ・ウォント・テッド」の声にもベンチを出てファンに応えるパフォーマンスを一切しなかった。なぜそれほどまでに?そう聞かれて答えたのが冒頭の言葉である。 日本球界にも神様はいる。「打撃の神様」川上哲治選手(巨人)、「神様・仏様・稲尾様」稲尾投手(西鉄)。最近では「代打の神様」八木選手(阪神)。 しかし、いずれもマスコミやファンの命名によるもので、ウイリアムスのように自ら任じた神様ではない。ウイリアムス自身の言葉が、鼻持ちならないとファンから嫌われないのは、野球が国の文化の奥深くに根付いているアメリカならばこそというべきだろうか。それとも日本よりも神の存在を信じる国民が多いアメリカの歴史的背景にあるというべきだろうか。なにしろ、現在でもアメリカのいくつかの州では、進化論ではなく、神が自らの姿に似せて人間を作ったという創造論が公式教育に使われているのだから。 ウイリアムスが打ちたてた半世紀前の打撃理論は「体重を後ろ足に残し、引き付けて全体重をボールにぶっつけるようにする。飛距離はバットの重さではなくそのスイングスピードで規定されるから軽い方がいい」などというものだが、これは現代における科学的検証を裏切らないものだ。 また、彼はストライクゾーンを横七、縦十一の合計七七に分け、自分の大リーグにおける全打席(七七○六打席)におけるすべての球がどのゾーンを通過したかを図解してみせたという。このチャート方式も現代のバイブルである。 投手を闘争相手とみなした神様・ウイリアムスの思考は進化論的であり科学的だったといえる。 |
(「損保のなかま」2005年7月1日付より)
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