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 ■18…見えているのに
   和田毅投手のサプライズ投法


「彼のような投手はいままで見たことがない。ヒットになると確信してスイングしたのに、全部がゴロやフライになってしまう。不思議な驚くべき投手だよ」(オリンピックで和田毅投手=ソフトバンクホークス=と対戦したカナダの好打者ピーター・オアー選手)

「日本に来て最も驚いたのはツヨシ・ワダのサプライズピッチング」(日ハム・ヒルマン監督)


和田毅投手
 身長179センチ、体重74キロ、華奢な感じさえ受ける和田投手は早稲田大学時代に、江川卓投手の持つ通算奪三振443という六大学記録を大幅に超える476という大記録を達成している。

 プロ入り後も三振奪取率(九回換算での奪三振数)は極めて高い。一年目の2003年が9.29、2004年8.06。加えて被安打率0.228はパリーグで最も低い(2004年)。和田投手が最も打ちにくい投手であることは数字も証明している。

 しかし、和田投手の主武器がストレートであり、その球速が130キロ後半といえば、それはまさにミステリーだ。かつて、大リーグのセネタースに在籍していた大投手ウォルター・ジョンソンの速球は「見えないものは打てるはずがない」と打者にいわせたが、和田投手のストレートは「しっかり見えているのに打てない」のだ。なぜか?

 謎は佐野真さんの「和田のストレートはなぜ打ちにくいのか」(講談社現代新書)が解き明かしてくれる。エッセンスだけを紹介すれば、ポイントは「初速」と「終速」の差。他の投手が平均して10キロなのに対して和田投手のそれは3、4キロ。そして、それを可能にしているのが投球の際にボールに与える「回転数」の多さ。和田投手の特別の才能がそこにある。(この本には特別付録として和田投手の卒業論文「投球動作における下肢の筋電図解析」が全文掲載されている。優れた分析力と論理から構築された見事な論文だ)。

 和田投手についてのもう一つのサプライズは、彼を支えるプロジェクト体制だ。和田投手には専属の個人契約を結ぶ土橋恵秀さんという専属トレーナー(個人コーチ、アドバイザーというべきか)がいる。学生トレーナー時代から二人三脚を組んでいる二人は、たとえば、前記「ボールの回転数」の把握を、感覚だけに頼ることなく、実際の測定法を編み出して活用するなど進取で科学的な態度に徹している。

 日米を問わず球界にありがちな一匹狼とは一味違う和田投手の思考と行動力。まさに時代を先取りしたものだ。


(「損保のなかま」2005年9月1日付より)


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